要旨
情報漏えいの公表が相次いだ2026年10月、経済産業省とIPAは注意喚起の中で、企業が使える支援策を並べて示しました。国と公的機関の支援は「知る」「宣言する」「導入する」「証明する」の4段階に整理でき、国の補助金「セキュリティ対策推進枠」を使うには「宣言」が条件になっています。本レポートでは、国と公的機関の資料をもとに、支援の段階、お金の支援、困ったときの相談先を整理します。あわせて、岩手県の事業者が使える県内の相談先を紹介します。
この記事のポイント
- 国と公的機関の支援は「知る(ガイドライン)」「宣言する(SECURITY ACTION)」「導入する(お助け隊サービス)」「証明する(SCS評価制度)」の4段階に整理できる
- お金の支援の中心は、お助け隊サービスの利用料を補助する国の補助金である。申請には SECURITY ACTION の宣言が必要で、次の締切は2026年10月30日である
- 被害に遭ったときの相談先は、警察、JPCERT/CC、IPA で役割が分かれている。連絡先を平時のうちに控えておくとよい
はじめに
2026年9月から10月上旬にかけて、国内の企業から大規模な情報漏えいの公表が相次ぎました。その経緯と、地域の事業者が見直したい点は、地活研レポート No.001 で整理しました。
続く10月9日、経済産業省と IPA(情報処理推進機構)が、それぞれ注意喚起を出しました。経済産業省の注意喚起は、企業が対策を進めるときに使える支援策のうち、「主な支援策」を並べています。SECURITY ACTION、お助け隊サービス、SCS評価制度、ガイドライン、専門家への相談、被害に遭ったときの手引きの6つです。
対策の必要を感じても、「何から始めればよいか」「費用はどうするか」で手が止まる事業者は多いはずです。国と公的機関の支援を並べてみると、段階ごとに整理できます。補助金のように、前の段階の「宣言」を条件にしているものもあります。
本レポートは、国と公的機関が公表している資料を、地域活性化総合研究所が整理したものです。制度の内容は、執筆時点(2026年10月)で各機関が公表しているものです。予定と書かれた日付は変わる可能性があります。
支援を4つの段階に整理する
国と公的機関の中小企業向けの支援は、次の4段階に整理できます。この段階分けは、地活研が整理したものです。
| 段階 | 制度 | 運営 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 1 知る | 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン | IPA | 最初に取り組む「6か条」と、25項目の自社診断 |
| 2 宣言する | SECURITY ACTION | IPA | 対策に取り組むことを自ら宣言する。一つ星と二つ星がある |
| 3 導入する | サイバーセキュリティお助け隊サービス | 民間の事業者(IPA の基準に適合したものを公表) | 監視・駆け付け・相談・保険をひとまとめにしたサービス |
| 4 証明する | SCS評価制度 | 経済産業省・IPA など | 取引先に対策の段階を示す。2027年3月ごろ開始の予定 |
1 知る:ガイドラインと「5分でできる自社診断」
IPA は2026年3月27日に、「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」の第4.0版を公開しました。最初に取り組む項目は、これまでの5か条に「バックアップを取ろう!」が加わり、6か条になりました。
6か条は次のとおりです。
- OSやソフトウェアは常に最新の状態にしよう!
- ウイルス対策ソフトを導入しよう!
- パスワードを強化しよう!
- 共有設定を見直そう!
- バックアップを取ろう!
- 脅威や攻撃の手口を知ろう!
ガイドラインの付録に「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」があります。25個の診断項目に答えると、自社の対策の状況をつかめます。どちらも IPA のサイトからダウンロードできます。
2 宣言する:SECURITY ACTION
SECURITY ACTION は、中小企業が対策に取り組むことを自ら宣言する制度です。IPA が会社の対策を認定するものではありません。宣言には2つの段階があります。
- 一つ星:6か条に取り組むことを宣言します。対策を実施する前でも申し込めます
- 二つ星:自社診断を実施し、「情報セキュリティ基本方針」を作って外部に公開したうえで宣言します。公開の方法は、自社のウェブサイトやパンフレットへの掲載などから選べます
2026年4月から、申し込みには「GビズIDプライム」または「GビズIDメンバー」のアカウントが必要になりました。GビズIDは、国の補助金の電子申請にも使うアカウントです。
この宣言は、次の段階の補助金の申請要件になっています。
3 導入する:お助け隊サービス
社内に詳しい人がいない会社でも、外部の見守りを受けられるようにしたのが「サイバーセキュリティお助け隊サービス」です。経済産業省は、24時間の異常監視、緊急時の駆け付け支援、相談窓口、簡易的なサイバー保険を「ワンパッケージで、かつ、安価で」提供するサービスと説明しています。
サービスは民間の事業者が提供します。IPA の基準への適合性の審査を経たサービスが、IPA のサイトで公表されます。基本の「1類」には、IPA の基準で価格の上限があります。
| 監視の方法 | 初期費用などの上限 | 月額の上限 |
|---|---|---|
| ネットワークを監視する場合 | 50万円(税抜き) | 1万円(税抜き) |
| パソコンなどの端末を監視する場合 | 端末数によらず50万円(税抜き) | 端末1台あたり2,000円(税抜き) |
監視の機能やコンサルティングを強化した「2類」もあります。2類には、月額の上限の金額は定められていません。
IPA の登録一覧には、提供する地域が書かれています。対象地域に岩手県や東北地方を含むサービスや、全国を対象とするサービスがあります。沿岸部まで実際に提供できるかは、各社に確認してください。
4 証明する:SCS評価制度
SCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)は、会社の対策の段階を「★」で示す制度です。取引先に、自社が対策をしていることを示すのに使います。
| 段階 | 求められる対策の数 | 評価のしかた | 有効期間 | IPA への登録料 |
|---|---|---|---|---|
| ★3 | 26件 | 専門家の確認を受けた自己評価 | 1年 | 1万円(1年分。2028年4月以降は2万円) |
| ★4 | 43件 | 評価機関による第三者評価と技術検証 | 3年 | 6万円(3年分) |
★3は、「全てのサプライチェーン企業が最低限実装すべき」対策と位置づけられています。サプライチェーン企業とは、取引でつながる企業のことです。★4を取るために、先に★3を取る必要はありません。★3・★4の申請にかかる費用について、IPA の FAQ は「今後公開予定」としています。執筆時点で公表されているのは、上の表の IPA への登録料です。
申請の受付は、2027年3月ごろに始まる予定です。経済産業省は、時期が変わる可能性があるとしています。
経済産業省と IPA は、SCS評価制度に向けた中小企業の支援も試しています。「お助け隊サービス(新類型)」の実証事業です。IPA の説明では、実証期間は2026年10月から2027年9月までの1年間の予定で、参加は無償です。IPA は2027年度末までの制度化を目指すとしています。
大企業や自治体の仕事を請けている事業者は、取引先から★の取得を求められる可能性があります。いまの段階では、★3の要求事項を確かめておくと準備になります。
お金の支援
国の補助金:デジタル化・AI導入補助金「セキュリティ対策推進枠」
国の補助金のうち、お助け隊サービスの利用料を補助するのは、デジタル化・AI導入補助金の「セキュリティ対策推進枠」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助の対象 | お助け隊サービスの利用料(最大2年分)。IT導入支援事業者が提供し、事務局に登録されたサービスに限る |
| 補助率 | 中小企業は1/2以内、小規模事業者は2/3以内 |
| 補助額 | 5万円〜150万円 |
| 主な申請要件 | SECURITY ACTION の一つ星または二つ星の宣言、GビズIDプライムの取得 |
| 加点 | 二つ星の宣言 |
| 次の締切 | 2026年10月30日(金)17:00(6次締切分) |
この補助金が対象にするのは、お助け隊サービスの利用料です。UTM(ネットワークの出入口に置く防御機器)などの機器を買う費用は対象ではありません。7次締切分の日程は、執筆時点で事業スケジュールに公表されていません。
機器の購入は自治体の助成金が対象になることがある
機器の購入を助成する制度は、自治体が設けている場合があります。たとえば東京都の「サイバーセキュリティ対策促進助成金」です。UTM などの機器やクラウドの利用料が対象で、助成率は1/2以内、上限は500万円です。
この助成金の申請には、SECURITY ACTION の二つ星の宣言が必要です。ここでも、2段階目の「宣言」が条件になっています。
岩手県と、大船渡市・陸前高田市・釜石市・盛岡市の公式サイトも確認しました。令和8年度(2026年度)の補助金で、セキュリティ対策を対象経費として明記したものは、確認した範囲では見当たりませんでした。県のデジタル化向けの補助金もありますが、セキュリティ対策を対象として明記してはいません。新しい制度が出ることもあるため、各自治体の発表を確認してください。
中小企業経営強化税制と公庫の融資は、セキュリティ専用ではない
中小企業経営強化税制や、日本政策金融公庫の「IT活用促進資金」もあります。しかし、どちらもセキュリティ対策を使い道として明記していません。使えるかどうかは、設備の内容や個別の審査によります。
困ったときの相談先
被害に遭ったときの相談先は、役割で分かれています。
| こんなとき | 相談先 | 内容 |
|---|---|---|
| 不正アクセスやランサムウェアの被害に遭った | 警察(最寄りの警察署、警察庁のオンライン窓口) | 通報・相談を受け付ける。ランサムウェアでは、初動対応の支援や復号ツールの案内ができる場合がある |
| 技術的な対応の助けがほしい | JPCERT/CC(インシデント対応依頼) | 初動対応のサポートなどを行う。犯人や行為者の特定、捜査の依頼には対応しない。電話は原則受け付けず、ウェブのフォームかメールで連絡する |
| ウイルスや不正アクセスについて相談したい | IPA(企業・組織向けの相談・届出窓口) | 相談や届出を受け付ける。事案の調査や解析はしない |
| 個人情報が漏えいした | 個人情報保護委員会 | 外部からの不正アクセスによる個人データの漏えいなどは、報告が義務になっている |
IPA の「情報セキュリティ安心相談窓口」は、個人向けの窓口です。企業・組織からの相談は、別の窓口に案内されます。
個人情報保護委員会は、報告の期限を示しています。速報は発覚から3〜5日以内、確報は30日以内です。不正な目的で行われたおそれがある場合は、確報は60日以内です。
岩手県内の相談先
| 相談先 | 連絡先 | 内容 |
|---|---|---|
| 岩手県警察本部 | 019-653-0110 | サイバー事案の通報・相談 |
| 警察安全相談 | #9110 または 019-654-9110(9時〜21時) | 警察への一般的な相談 |
| 岩手県よろず支援拠点 | 019-631-3826 | 無料の経営相談。ITコーディネーターも相談員にいる |
| いわて産業振興センター | 019-631-3825 | 「地域産業デジタル化支援事業」として、研修と専門家による伴走支援を案内している |
岩手県警察のサイトには、警察庁のオンライン窓口への案内もあります。よろず支援拠点といわて産業振興センターは、セキュリティ専門の窓口ではありません。IT やデジタル化の相談の中で、対策の進め方を相談できます。
地域の事業者にとって何を意味するか
ここまでの制度を並べると、3つのことが分かります。
1つ目は、最初の段階は手元の作業から始められることです。ガイドラインと自社診断は IPA のサイトからダウンロードできます。SECURITY ACTION の申込方法のページに、料金の案内はありません。宣言した会社は、ロゴマークを無料で使えます。
2つ目は、補助金や助成金には、宣言を条件にしているものがあることです。国のセキュリティ対策推進枠は一つ星以上、東京都の助成金は二つ星を条件にしています。宣言を済ませておくと、こうした支援に進めます。
3つ目は、岩手県の事業者にとって、お金の支援の中心は国の制度であることです。確認した範囲では、県と市にセキュリティ専用の補助金は見当たりませんでした。一方で、相談の窓口は県内にもあります。
今日からできること
5分でできる自社診断を受ける
IPA のサイトから自社診断をダウンロードし、25の項目に答えてみます。できていない項目が、次に取り組むことになります。
SECURITY ACTION を宣言する
まだアカウントが無ければ、GビズIDのプライムを申し込みます。そのうえで、申込方法のページに沿って一つ星を宣言します。自社診断を済ませ、基本方針をウェブサイトなどに載せれば、二つ星も宣言できます。
相談先を紙に書いておく
警察(019-653-0110)、JPCERT/CC、IPA の窓口を、被害に遭う前に控えておきます。誰がどこに連絡するかも決めておくと、いざというときに慌てずに済みます。
お助け隊サービスの導入を考えるなら、補助金の締切(次は10月30日)と、提供事業者が自社の地域に対応しているかを確認します。
おわりに
セキュリティ対策は、専門の担当者がいない会社ほど後回しになりがちです。国と公的機関の支援には、中小企業向けに作られたものが多くあります。段階ごとに使えば、費用の補助や外部の見守りも受けながら対策を進められます。
地活研では、デジタル伴走支援や研修の中で、事業者の方と一緒に自社診断や宣言の準備を進めています。どこから手をつければよいか分からないという段階でも、お気軽にご相談ください。
要約
- 国と公的機関の支援は「知る」「宣言する」「導入する」「証明する」の4段階に整理できる
- SECURITY ACTION の宣言が、国のセキュリティ対策推進枠の申請要件になっている
- 国の補助金は、お助け隊サービスの利用料を最大2年分補助する。次の締切は2026年10月30日である
- SCS評価制度の★3・★4は、2027年3月ごろに申請の受付が始まる予定である
- 被害に遭ったら、警察・JPCERT/CC・IPA に相談できる。岩手県内では県警本部やよろず支援拠点が窓口になる
出典・参考文献
- 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(2026年3月)
- 「一つ星」を宣言する 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
- 「二つ星」を宣言する 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
- SECURITY ACTION 自己宣言の申込方法 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
- サイバーセキュリティお助け隊サービス制度 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
- サイバーセキュリティお助け隊サービス基準(2.1版) 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
- サイバーセキュリティお助け隊サービス(新類型) 経済産業省(2026年9月)
- サイバーセキュリティお助け隊サービス(新類型)実証事業 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
- 「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針」(SCS評価制度の構築方針)を公表しました 経済産業省(2026年3月)
- SCS評価制度の詳細情報 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
- サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度 料金設定のお知らせ 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(2026年9月)
- セキュリティ対策推進枠 デジタル化・AI導入補助金事務局(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
- 事業スケジュール デジタル化・AI導入補助金事務局(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
- サイバーセキュリティ対策促進助成金 公益財団法人東京都中小企業振興公社
- 不正アクセスによる情報漏えい等の事案を踏まえた注意喚起及び情報提供に係る協力依頼 経済産業省(2026年10月)
- 不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえ、速やかに実施すべき対策等について 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)(2026年10月)
- サイバー事案に関する相談窓口 警察庁
- ランサムウェア被害防止対策 警察庁
- インシデント対応依頼 一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター
- サイバーセキュリティ 相談・届出窓口一覧 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
- SCS評価制度に関するFAQ 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
- 漏えい等の対応とお役立ち資料 個人情報保護委員会
- サイバー事案の通報・相談・情報提供 岩手県警察
- 警察安全相談(電話・メールでのご相談) 岩手県警察
- 岩手県よろず支援拠点 - 中小企業・小規模事業のための経営相談 岩手県よろず支援拠点
- 地域産業デジタル化支援事業 公益財団法人いわて産業振興センター